ホーム> Salon de AI メディア> AI研修の現場から> 生成AIの情報漏洩対策は、勉強会30分から。社員に教える3つのこと【早見表付き】
生成AIの情報漏洩対策を調べると、流出事例のまとめと、入力禁止リストと、セキュリティツールの紹介が並びます。
どれも間違いではありません。ただ、実際に情報を入力するのは社員です。対策の本体は道具ではなく、社員教育です。そしてそれは、30分の勉強会から始められます。
わたしたちはこれまで50回以上、中小企業の現場で生成AI研修を実施してきました。そのなかで、AIを安全に使うための教え方も扱ってきました。
この記事では、社員に教えることを3つに絞って、そのまま使える早見表と、30分の勉強会の進め方まで公開します。
情報漏洩は「悪意」ではなく「善意」で起きる
生成AIの情報漏洩と聞くと、情報を持ち出す社員を想像するかもしれません。実際に起きるのは、その逆です。
仕事を早く終わらせようとした、まじめな社員が起こします。よくあるのは、この3つです。
①議事録や提案書を作ろうとして、顧客名や未公開の数字をそのまま入力する
②会社が把握していない個人アカウントや無料版で業務に使う
③AIが作った文章に元の機密情報が残ったまま社外に出す
生成AIサービスは、設定やプランによっては、入力した内容がAIの学習に使われることがあります。個人情報保護委員会も2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」を公表しており、東京都産業労働局も中小企業に対して、入力してよいデータの明確化と従業員教育を推奨しています。
つまり、公的機関の推奨もそろって「教育」を指しています。問題は、何をどう教えるかが、どこにも具体的に書かれていないことです。
「禁止だけ」の対策がいちばん危ない
漏洩が怖いからと、生成AIを全面禁止にする会社があります。気持ちは分かりますが、これはいちばん危ない選択です。
便利なことを、社員はもう知っています。禁止すると、個人のスマホで、会社に隠れて使われるようになります。いわゆるシャドーAIです。
隠れて使われると、会社は使われ方を見ることも、教えることもできなくなります。ルールを厳しくしすぎた会社で同じことが起きる過程は、社内ルールの記事で書きました。
禁止ではなく、「安全な使い方を教えて、会社の見えるところで使ってもらう」。これが情報漏洩対策の出発点です。
社員に教えるのは3つだけ
勉強会で教えることは、3つに絞ります。逆に言うと、この3つが揃っていない教育は、リストを配っただけで終わります。
その1:入力の線引き——迷ったら「固有名詞と数字」を探す
入力してはいけない情報のリストは、細かく作るほど覚えられません。教えるのは、リストの暗記ではなく判断のしかたです。
入力する前に、文章の中の「固有名詞」と「数字」を探す。人名・社名・住所などの固有名詞と、金額・未公開の数字が入っていたら、いったん手を止める。これなら誰でもその場で判断できます。
そのうえで、絶対に入力しないものを5種類だけ覚えてもらいます。
①個人情報(氏名・住所・連絡先)
②パスワードなどの認証情報
③未公開の財務・経営数字
④人事情報
⑤取引先から預かった情報
などです。
その2:言い換えて使う——「入れるな」で終わらせない
禁止だけ教えると、社員は使うのをやめるか、隠れて使うかの二択になります。だから、言い換えれば使えることをセットで教えます。
顧客名は「A社」に。担当者は「Bさん」に。金額はダミーの数字に。住所は「関西の顧客」に。これだけで、文章の型や構成を作るというAIの働きは、そのまま使えます。
実は、この「言い換えの練習」が勉強会でいちばん盛り上がり、いちばん定着します。自分の業務の文章で一度やってみると、次の日から自分でできるからです。
その3:窓口を1人決める——間違えたら「すぐ言える」ようにする
線引きに迷ったとき、聞ける相手がいないと、社員は自己判断で入力するか、使うのをやめてしまいます。質問できる窓口を、1人決めてください。詳しい人でなくて構いません。「迷ったらこの人に聞く」が決まっていることが大事です。
そしてもう1つ。入力してしまったときの報告を、責めないでください。
責めると、次から報告されなくなります。報告されない誤入力は、発覚が数か月遅れます。「入れてしまったかも、とすぐ言える空気」が、実は最大の防御です。
そのまま使える:入力の早見表
勉強会で配る早見表の型です。3分類だけのシンプルな表にします。内容は記入例です。
| 分類 | 例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| そのまま入力してよい | 公開済みの自社HP・プレスリリースの文章/一般的な文章の型・言い回しの相談 | ふつうに使う |
| 言い換えれば入力してよい | 顧客名入りの議事録→「A社」に/金額入りの提案文→ダミーの数字に/担当者名→「Bさん」に | 固有名詞と数字を置き換えてから使う |
| 入力しない | 個人情報(氏名・住所・連絡先)/パスワード・認証情報/未公開の財務・経営数字/人事情報/取引先から預かった資料 | 言い換えても入力しない。迷ったら窓口へ |
1つだけ注意があります。この線は、業種と取引先との契約で変わります。たとえば取引先と秘密保持契約を結んでいる情報は、言い換えの余地なく「入力しない」側です。この表を土台に、自社の言葉に直して使ってください。
30分の勉強会の進め方
教える3つが決まれば、勉強会は30分でできます。わたしたちが研修でお伝えしている進め方を、時間配分ごと公開します。
いちばん効くのは、3つ目の「言い換えの練習」です。自分がふだん書いている文章を1つ持ち寄って、その場で言い換えてみる。ここまでやると、翌日から行動が変わります。
そして、1回で終わらせないでください。半年に1回、そして新しいAIツールを会社に入れたときに、同じ30分を繰り返します。ツールが変われば、設定も入力の勝手も変わるからです。
あわせて、会社側の最低限の設定も整えてください。業務利用は会社が把握しているアカウントに寄せること。入力内容が学習に使われない設定やプランを選ぶこと。この2つは教育と別枠の、会社側の仕事です。どのツールに寄せるかの考え方は、ツールの使い分けの記事で書いています。
教育とルールは両輪で
勉強会で教えたことは、文書にも残します。といっても、分厚い規程は要りません。A4一枚で十分です。
A4一枚の社内ルールの作り方とテンプレートは、社内ルールの記事で全文を公開しています。教育(人に教える)とルール(文書に残す)が揃って、はじめて対策として機能します。
よくあるご質問
もう社員が勝手に使っています。どうすればいいですか?
叱るところから入らないでください。隠れて使われる方向に進むだけです。
順番は、
①誰がどんな業務で使っているかを聞く
②30分の勉強会で線引きと言い換えを教える
③会社公認の使い方を示す
です。
すでに使っている社員は、教えれば社内でいちばん頼れる存在になります。
無料版を禁止して、法人プランに統一すれば安全ですか?
大きな前進ですが、それだけでは守れません。
学習に使われない設定にしても、取引先から預かった情報や秘密保持契約の対象を入力してよいことにはなりません。道具の整備と、入力の線引きの教育は別ものです。
取引先から「うちの情報をAIに入れないで」と言われたら?
契約と約束が最優先です。その取引先に関する情報は、言い換えの余地なく「入力しない」に分類してください。
逆に、早見表と勉強会の仕組みがあることを説明できると、取引先からの信頼は上がります。「対策を聞かれたときに答えられる」こと自体が、営業上の強みになります。
30分で本当に足りますか?
完璧を目指す場ではなく、判断のしかたと窓口を全員でそろえる場、と考えてください。30分を半年ごとに続けるほうが、半日研修を1回やって終わるより効きます。
教えたことが定着したかどうかは、業務の時間で確かめられます。確かめ方は効果測定の記事で書いています。
まとめ:教えるのは3つ。30分から始める
生成AIの情報漏洩対策で大事なことは、3つに集約されます。
- 禁止しない——禁止は隠れて使われる入口。見えるところで使ってもらい、教える
- 教えるのは3つ——入力の線引き・言い換えて使う方法・迷ったら戻る窓口
- 30分を繰り返す——半年に1回+新しいツールを入れたとき。報告は責めない
わたしたちの研修では、生成AIの活用と安全な使い方をセットで扱い、入力の線引きの決め方から社内への広げ方まで、自社で回せるようになるための考え方をお伝えしています。
研修の内容はサービスページをご覧ください。
「うちの業種なら、どこまで入力してよいのか」を確認したい方は、無料相談でご一緒します。お気軽にどうぞ。