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生成AIの使い分けは、まず1つに絞ってから。
業務から決める4つの判断順序【シート付き】

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「ChatGPTとGeminiとClaude、うちはどれを使えばいいですか」——研修の現場でいちばん多い質問です。そして結論から言うと、まずは1つに絞って構いません。使い分けは、その1つが定着してから考えれば間に合います。

わたしたちはこれまで50回以上、中小企業の現場で生成AI研修を実施してきました。その中で何度も配ってきたのが、ツールの使い分け表です。そして何度も見てきたのが、配った表が、次の研修までに一度も開かれていないという光景でした。

この記事では、比較表を配るのをやめたあとにたどり着いた「業務から決める」という選び方を、そのまま使える割り当てシートつきでお伝えします。なお、この記事にはモデル名や料金のスペック比較表は載せていません。その理由も本文でご説明します。

使い分け表は、配った時点で仕事が終わってしまう

研修の序盤で比較表を配ると、反応はとてもいいです。「わかりやすい」「助かります」と言っていただけます。ところが次の回で「あの表、使いましたか」と伺うと、ほとんどの方が使っていません。

理由は、表の出来ではありませんでした。表は「選ぶための道具」ですが、現場の社員が求めているのは、選ぶことではなく目の前の仕事を早く終わらせることだからです。

実際に起きているのはこういう流れです。表を見る。どれも良さそうに見える。自分の仕事にどれが当てはまるのか判断がつかない。迷っているうちに締切が来る。結局、いつものやり方で片づける。——選択肢が増えるほど、人は決められなくなります。

これは前回の記事(社員がAIを使わない3つの原因)で書いた構造とまったく同じです。判断を個人に丸投げすると、いちばん安全な「使わない」が選ばれます。使い分け表は、良かれと思って配った判断の丸投げでした。

この記事に、モデル名と料金の比較表を載せない理由

もうひとつ、比較表をやめた実務的な理由があります。半年で使えなくなるからです。

生成AIのツールは、モデルの更新、プランの改定、機能の追加が数か月単位で起こります。研修で配った比較表が、次のクールには古い情報になっている——これを何度か経験しました。古い表は、ないよりも危険です。社員はそこに書いてある前提で判断してしまいます。

一方で、半年では変わらないものがあります。自社が今使っているグループウェア、扱っている情報の機密度、いちばん時間を食っている業務、社内に教えられる人がいるかどうか。これらは会社側の条件で、ツールの都合では動きません。

だから、ツールの性能から選ぶのではなく、変わらない自社の条件から決めます。この順番にしてから、研修後にツールが実際に使われる割合がはっきり変わりました。

軸を1つ決める、4つの判断順序

研修でお伝えしている決め方が、次の4つです。上から順に見て、条件が決まったところで決めてしまってください。4つすべてを満たす完璧な1つを探し始めると、また選べなくなります。

STEP 1
今のグループウェアに合わせる
Microsoft 365ならCopilot、Google WorkspaceならGemini
STEP 2
機密度で契約形態を先に決める
顧客・見積・人事の情報なら法人契約
STEP 3
時間を食う業務に当てる
全社一律ではなく、1つの業務に
STEP 4
教えられる人がいるか
詰まったときに聞ける人のいるツールを軸に
上から順に見て、決まったところで決める
図1 軸のツールを1つ決める4つの判断順序

1. 今使っているグループウェアに合わせる

Microsoft 365をお使いならCopilot、Google WorkspaceならGeminiが、すでに毎日開いている画面の中にいます。別のタブを開いて、資料をコピーして貼り付けて、出てきた結果をまた戻す——この往復の手間は小さく見えて、定着を左右します。

「性能がいちばん高いもの」より「開く手間がいちばん少ないもの」が勝ちます。すでに毎日開いている画面の中にあることは、それだけで強い理由になります。

2. 扱う情報の機密度で、契約形態を先に決める

顧客情報、見積、人事に関わる情報を扱うなら、ツール選びより先に法人契約かどうかを決めてください。個人アカウントでの業務利用は、費用の問題ではなく会社が誰の何を把握できないかという管理の問題です。この線引きは社内ルールの記事で書いたA4一枚のルールと一緒に決めるのが早いです。

3. いちばん時間を食っている業務に当てる

全社一律で配らないでください。時間を食っている業務を1つだけ選び、そこに当てます。

わたしたちの社内では、議事録づくりが3時間から5分になり、月末の経理作業が1日から30分になりました。効果が数字で見えると、次の業務に広げる判断が驚くほど速くなります。逆に、全社に薄く配ると、どこが良くなったのか誰にも分からず、次が動きません。議事録から始める場合の具体的な手順はこちらの記事にまとめています。

4. 社内に「教えられる人」を作れるか

どれだけ性能が良くても、詰まったときに聞ける人が社内にいないツールは止まります。すでに社内でいちばん詳しい人が触っているツールを軸にするのは、性能で選ぶより合理的な判断です。その人が教えられる立場になれるかどうかまで含めて考えてください。

そのまま使える:業務→ツール割り当てシート

軸が決まったら、次は「どの業務に、どこまで任せるか」を書き出します。研修で使っているシートの形を公開します。

業務 週にかかる時間 任せる範囲 担当 見直し日
議事録の作成 3時間 文字起こし+要約の下書きまで(確認は人) 〇〇 〇月〇日
メールの下書き 2時間 初稿のみ(送信文は人が整える) 各自 〇月〇日
資料作成 4時間 構成案と見出しまで 〇〇 〇月〇日
調査・情報収集 2時間 候補集めまで(出典は人が確認) 各自 〇月〇日
毎回同じ手順の定型作業 5時間 手順の言語化から着手 〇〇 〇月〇日

埋めるときのコツが2つあります。

1つめは、「任せる範囲」を最初から全部にしないことです。下書きまで、構成案まで、と手前で止めておくと、出てきたものが多少ずれていても実害が出ません。範囲を広げるのは、精度が読めてからで十分です。

2つめは、週にかかっている時間が分からない業務には、まだ手をつけないことです。時間が測れていない業務は、AIを入れても効果が測れません。効果が見えない改善は、社内で続きません。

なお、いちばん下の「毎回同じ手順の定型作業」は、手順を言葉にできると、その手順ごと会社に残せる領域です。エンジニアがいない会社での進め方はClaude Code研修の記事で詳しくご説明しています。

2つ目を足すのは、1つ目が週1回以上使われてから

「使い分け」に進んでいい合図を、感覚ではなく数字で持っておくと迷いません。わたしたちが目安にしているのは、軸のツールが週1回以上、実際の業務で使われている状態です。

週1回に届いていない段階で2つ目を足しても、使う回数は増えません。その状態でのボトルネックは、選択肢が足りないことではなく、使う場面が決まっていないことだからです。ここでツールを足すと、選ぶ手間だけが増えて、かえって使われなくなります。

軸のツールは、週1回以上、実際の業務で使われている?
▼
まだ使われていない
足さない
使う場面を決めるのが先
「もっといいものがあるらしい」だけ
足さない
業務の名前がまだ出ていない
軸では届かない業務が名前つきで出てきた
その業務にだけ2つ目を足す
必要な部署だけに
図2 2つ目のツールを足していい合図

逆に、2つ目を足す正しいきっかけははっきりしています。「軸のツールでは届かない具体的な業務」が名前つきで出てきたときです。「もっといいものがあるらしい」ではなく「この業務のここが軸だと苦しい」という形で出てきたら、そこだけ2つ目を足します。

現場に実際に届く質問から

わたしたちは研修を受講中の企業さま限定で、研修と研修の間もチャットで質問を受け付けています。ツール選びで届く質問のうち、多い2つをご紹介します。

「複数契約すると、費用が二重になりませんか」

全社一律で2つ目を配ると、たしかに二重になります。現実的なのは全社は軸の1つ、2つ目は必要な部署だけという形です。前項の「名前つきの業務が出てきた部署にだけ足す」を守れば、費用は業務単位で説明できる形に収まります。

「使いこなせる人とそうでない人の差は、何ですか」

ツールの知識量ではありませんでした。差がついているのは自分の仕事を工程に分解できているかどうかです。「資料を作る」のままだと指示が出せません。「構成を決める」「見出しを立てる」「本文を書く」「体裁を整える」と分けられる人は、どのツールでも成果を出します。だからわたしたちの研修は、ツールの操作より業務の棚卸しに時間をかけています。

よくあるご質問

結局、いちばん性能が高いのはどれですか?

その順位は数か月で入れ替わりますし、業務によって逆転します。中小企業の実務では、性能差より「開く手間の少なさ」と「聞ける人がいるか」のほうが結果に効きます。順位を追いかけるより、軸を決めて業務に当てるほうが早く成果が出ます。

部署ごとに違うツールを使ってもいいですか?

軸が定着したあとであれば問題ありません。ただし、入力してよい情報の線引きだけは全社で1つに揃えてください。ツールが分かれてもルールが分かれると、把握できない利用が生まれます。

社員が勝手に別のツールを使い始めました。止めるべきですか?

まず、何の業務に使っているかを聞いてください。多くの場合、それは軸のツールでは苦しかった業務の申告です。頭ごなしに止めると、次からは申告されずに個人アカウントで続きます。会社契約に載せ替えられないかを先に検討してください。

軸を後から変えてもいいですか?

変えて構いません。ただし、変える理由が「新しいものが出たから」の場合はおすすめしません。グループウェアの移行や、扱う情報の範囲が変わったときなど、4つの判断順序のどれかが変わったときが、軸を見直すタイミングです。

まとめ:選ぶのをやめて、当てる

生成AIのツール選びで大事なことは、3つに集約されます。

  • まず1つに絞る——比較表を配るほど、現場は決められなくなる
  • ツールの性能ではなく、自社の条件から決める——グループウェア、機密度、時間を食う業務、教えられる人
  • 2つ目は、週1回使われてから——使われていない段階で足しても増えない

わたしたちの研修では、この割り当てシートの使い方を、業務の棚卸しから順にお伝えしています。実際に時間を使っている業務に、軸を1つ当てて考えられるようになることが目標です。

「うちの場合、どの業務から当てればいいのか」を知りたい方は、無料相談でご一緒します。お気軽にどうぞ。

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